プロ客VSプロ店員

人生色々あって、研修中という札をつけて

プロ店員見習いとして現在鋭意客前に立つのであるが、

そりゃ客にも色々あって、

プロ客、セミプロ客、プロクレーマー、ぷちクレーマー、気狂いと様々だ。

時給700円の店員に、敬語がなっていないと怒る人もあれば

普通に世間話をして帰るおばさんもある。

様々な客を見た結果、

私はプロ客になろうと

制服を脱いで、経済活動に参加する暁には

色々と捗る様に工夫を凝らしてきた。

だのに。


先日、AYUMIBOOKSという仙台の本屋で本を2冊買った。

私は出来るだけ店員を急かさない様に、ゆったりとしたオーラを纏い

気品溢れる皇族の様な塩梅で、

手を振る際は、肩のラインを絶対に超えない事を強く意識して

参道にいらっしゃる方々に微笑み、手を降っている

そんなイメージで本を2冊店員に手渡し、

ブックカバーはお付けしますか

お願いします

と心を通じ合わせ、その後は店員の一挙手一投足を注視する事無く、

ただぼうとそこに立ち、

その際は雰囲気系女子の纏うオーラ、

具体的に言うと、クラムボンってな感じの塩梅で

週末はカフェで読書をします系を演じ、

店員もそれに応え、手際よく仕事をこなし

私は代金を払い店を出た。


家に帰ってさて本を読もうかと袋から出してびっくりした。

私が買ったのは、普通の文庫本サイズだったのであるが

ぱっと見、でかいと思った。

あれ、俺が買ったのは NON とか書いたビジネス書だったっけ?という位のでかさであり

どうも様子がおかしい。

私が買ったのは、町田康のテーストオブ苦虫の7と8であって

縦長のビジネス書では無いはずである。

それで、前回AYUMIBOOKSで買った文庫本と比べてみようと

ブックカバーをよく吟味してみると、

まず縦が5cm程長く、本来折るべき部分を

復数箇所端折っており、あからさまな手抜き工事が行われたのは明白であった。

私はまず客として自分に不手際が無かったか考えたが、

皇族&クラムボンの私に手落ちがあるとは思えず、

しかしながら、圧力をかけまいと店員の手先に注視する事は避け

レジ周りの広告やなんかに目を向けておったのであったが

そこで思った。

それが不味かった。


現在では、書店に検索機が置かれている事は最早珍しくなく

書店員の書店員たるスキル、見せ場はブックカバーの取り付けにしか無いと言っても過言では無い。

私は以前、東京都は大塚にある書店で神業のブックカバー捌きをこの目で見て

それ以降、その手捌きを見る為だけに本を選んで買うという事をした位

ブックカバーを付けるという作業に、書店員の意地とプライドを見てきた。

だのに、事もあろうに私は

店員の一番の見せ場を、ははっ 好きにしてくれたまえよ

といった一段上の高みからそれを見ようともせずにそこに立っていた。

客と店員、本来対等の立場であるにも関わらず

私はその時点で店員に対する敬意を欠いていたと言っても良く

それに腹を立てた店員は、

そっちが適当なら、こっちも適当。

やられたらやり返す、倍返しだ となるのは明白。

これからは、

書店員には敬意を払い、ブックカバーの取り付けに関して

プロの目を光らせたいと心に誓ったのでありました。