真面目な土建屋についての話 (一切の笑いが無いので興味無い方はスルー推奨)

私の父は土木建設業をしていて、社長だった。

父さんの会社が倒産した

これを人に言っても心配されるだけだというのが分かった。

数年前、小泉純一郎の政策によって

会社は大打撃を受け、その2年後 結構な借金を父は抱えその挙句倒産を決めた。

一時期、不況の時代に公共事業をするのはバラマキだと大きな批判があって、

それで公共事業は大幅に減ってしまった。結果、土建屋は仕事を奪い合う形になり相次いで倒産していった。

私の田舎に限って言えば、談合は当たり前に行われていたし私もそれに参加した。


どういう風になっているかというと、

まず役所が工事の値段を設定する。

これを最低落札価格と言って、業者はこの値段を超えて入札する事は出来ない。

これは談合によって無駄に値段が高くならなくする為に出来たもので、これは世間にも公表される。

そこで業者は、まず誰がその工事を取るのかを話し合う。

会社から近い業者が優先的に取ったりもするが、基本的には順番で回ってくる。

けれども、工事の値段はピンきりで当たりもあればハズレもある。

そしてその仕事を取る業者が決まると、

最低落札価格に合わせて、取る業者の入札価格が他の業者に知らされる。

1000万円の工事であるなら、

998万円で入札するからと通知があって、他の業者は一円でも多く入札金額を書いて投票する。

これでめでたく談合は成立する。


メリットとしては、

競争をする事で、工事の値段が下がるのを避けられる事

特定の業者に仕事が集中するのを防ぐ為

他の業者はライバルでもあるが、仲間でもある為

こんな所だろうか。


最後の仲間でもあるというのが、建設業が少し特殊な業態であるという証左で

今では一般的な派遣業というものも、昔は建設業で主にみられるものであった。

年末の大量の道路工事で分かる通り、

仕事は年間を通して一定してある訳では無く、主に9月を過ぎた頃から増え始める。

つまり4月から9月まではほとんど公共事業は無い。

その期間、自分の会社が仕事が無い場合 被雇用者(人夫)を他の会社の現場で働かせるという事が出来る。通称 人夫貸し

これをする事で、会社は常に一定の従業員を雇いながら

仕事が無い時も給料を保証する事が出来る。

父の会社も仕事が無く、人夫貸しも出来ない時なんかは

3日間会社の掃除やメンテナンスをするなんてな事もあって、

といっても1日もあれば荒方終わってしまって、2日目からはみんな申し訳ない気持ちで仕事をしているフリをするなんてな事もあった。


田舎には、田舎に残る決断をする若者が少なくそれは仕事が無いからというのが一番の理由だ。

父の会社には、私と弟以外に3人の若者がいた。

会社が倒産して、全員県外に出る事になった。

私の生まれた村に、今若い人はほとんどいないし戻る事も難しい。


土方と言われる人達は、底辺職だと言われる。

誰にでも出来る 資格がいらない 日雇いで出来る

公共事業が無くなった事で、職を失った人たちを本人の努力が足りないというのは容易い。

しかし、それが一つの受け皿になっていた為に

地元に残るという選択をし、結婚し家庭を築くという人達もいた。


小泉改革で仕事は一気に前年の3分の1にまで減り、業者はそれを譲り合ってきたのだけど

談合があるおかげで、一気に業者が増えてしまった。

建築業者等の参入で、少ない仕事を多くの業者で奪い合う形になった。

不況の煽りを喰った他の業種のたくさんの業者が入札に参加するようになった。

他業種の会社は、自分で工事をする事は出来ないのにである。

設備も無ければ人員もいないのに、ただ入札に参加し談合で仕事をかっさらう。

そしてそれの上前をピンはねして、下請けに出す。

何もしなくても儲けが入るという寸法だ。

そんなこんなで談合破りをしないと会社が傾くなんてな状況になり、

そこで初めて指名競争入札というものが本来の機能を発揮しだす。

そしてその競争の結果、ほとんどの業者が潰れてしまった。

残ったのは、手抜き工事で利益を出してきた業者や、

ただ下請けに出すだけの名前だけの業者である。


公共事業の良い所は、まず底辺にきちんとお金が回るという事である。

そしてその底辺から上に上にお金が回る事で、経済が見事に躍動する。

競争を促すというのは、

勝者と敗者を確定させるという事であって、みんなが努力して良い社会になるんだぜ というのは正しい意見だけれど

問題は割合であって、

1割の勝者と9割の敗者を生むような今の社会は、このままでは絶対多数の人間の不幸の上に幸福が生まれる社会であって

それはあまりにも厳しい。

私の地元では、競争の結果劣悪な業者だけが生き残ったというのが

競争というものの一つの真理では無いでしょうか。


ちなみに通報した と言っても、

父は談合を最終的に告発し、結果もみ消されたのでそれには及びませんぞ。


PS 個人的に思う問題点は、下請けというシステムにあるのだと思います。これは派遣業にも言える事で、ピンはねを容認する社会のシステムは絶対におかしいと思うなあ  東電についてもしかりですね。