ダフトパンク「ゲットラッキー」の解説とか

前回、ダフトパンクの新譜について少々書きましたが

今回は先行シングル「ゲットラッキー」についてです。

この曲は公式で動画があるので、胸を張ってここに貼り付ける事が可能なはず。


ギターをシックというディスコバンドのナイル・ロジャースが弾いているところからも分かる様に

完全に80’sなノリですが微妙に熱が低い感じがあります。

これは何でなんだろうと考えましたところ、

コード進行が微妙にツボを外しているからだという事が分かりました。

毎度毎度、専門的な話はうぜーよ 働けよ

そういった方もいらっしゃるかとは思いますが、まあ聞きなはれ。


コード進行は、基本的に行きたがるコードの連なりによって生まれるものでして、

例えば、C と弾いた場面では次の一手

基本的にC#とF#を除いたどのコードにもいけるものですが、

C-F と進行してしまった局面では通常かなりコードが限定されている訳です。

最も有力なのがG、次いでCに戻す手で次点でFmといった塩梅でして

というのも、コードは基本的に4度上のものか半音下のものに行きたがる性質を持っている為で

じゃあそれは何故かというと、コードの中の音が半音で移動するのが最も力強いからで

ド・ミ・ソからファ・ラ・ドと移動する時は、

ミからファの音が半音で上昇する為に移動が容易であって

それが仮に

ド・ミ・ソからソ・シ・レであっても

ドとシで半音の移動が行われているのでありまして

こういった半音移動だけで構成されたコード進行を我々音楽家

自嘲や侮蔑を込めて

クリシェと呼んでおります。

例えば、マイウェイという曲や君の瞳に恋してるなんかはクリシェの代表曲といってよく

カノンの様なベース音が下がっていくパターンもカノン進行と呼ばれたり

大事マン進行とバカにされたりしています。

で、音楽家はどうにか新しい一手を求めてコードの森を彷徨う訳ですが

その後、一般的なコード進行が一般的なのはそれが最も自然な進行だからである事実に気づき愕然とします。

かつて、シド・バレットと呼ばれた変態がいますが

彼の使う進行はヘンテコで、そしてそれが理由で聴いていてもやもやします。

そういった変態性を好む変態も世の中には少数いますが、

どこまでいっても変態は変態であって、それが王道になる事はありません。

レナード・コーエンという変態の場合は、

一見普通の振りをしてますが、実は変態というパターンで

1ブロックだけを見れば普通ですが、ブロックとブロックの間に強引な進行があって

実は何度も転調をしているという事があります。

ジョニ・ミッチェルという変態淑女の場合は、

至って普通のコード進行であるのに、人と違ったチューニングをしたギターで弾く事によって

コード自体が変態的な響きを獲得した稀有な例であって

結局のところ、人と同じ事をするのは嫌だ と言っても

ポップソングである以上、また西洋の音楽理論で作られている以上

いわゆる普通のコード進行と結局は向き合わねばなりません。

これが俗に言う、調性音楽の限界であり

パンクは死んだ ロックは死んだ という言葉へと繋がる事になる訳です。


で、

ダフトパンクは「ディスカバリー」というアルバム以降

失速を重ねるのですが、それはいわば独自のポップ路線のその先が見えづらかったからではないかと私は思う訳です。

で、今回歌ものを出してきたというのは

新たな一手を発見したからではないかと睨んでいまして

それが、5度下降進行だと私は思うのです。

ゲットラッキーのコード進行は

Bm-D-Fm−E となっていて、

EからBmがまず5度下降の進行で

FmをAの代理和音と考えると、A-Eという進行も5度下降で

更にDをBmの代理和音と考えると

Bm−Fmというコード進行も浮かび、これも5度下降なのであります。


5度下降は個人的にもそれ程意識して使った事が無かったので、

もしかしたらこれからのトレンドになるのやも知れません。


といった訳で、最後に浜崎あゆみのアルバムから

誰得?ってな感じのダフトのサンプリングを使った曲を紹介して



ちなみに、YOUTUBEマイケル・ジャクソンのビリー・ジーンとゲットラッキーマッシュアップが大量にあがってますが

ビリー・ジーンのコード進行は、4度上昇進行が基本なので

個人的にはそんなに優れたマッシュアップにはなっていない気がするのであります。