第二回ベース講座

第二回ではギターとベースの役割の違いから、ベースという楽器はどんな事をする楽器かを学んでいきましょう。

まず、音楽にはジャンルというものが存在します。

ロックをやろう、ジャズをやろう、パンクをやろう

音楽には必ずそうした意図が存在します。

ジャンルには縛られたくない とかぬかすアホがいますが、あり得ません。

ではジャンルとはどうやって出来るのか?

ジャンルとはただ単にCDを売る側が商売の為に勝手にくくった枠でしかありません。

しかし私たちはレゲエを聞いたらレゲエだと分かりますし、

ジャズを聞いたらジャズだと分かります。

我々はどこでジャンルを判断しているのか?となると、

1,コード楽器のリズム(ピアノやギター等)

2,音色(特にギター)

3,音階(民族音楽か否か)

4,楽器編成

5,精神(反社会的かどうか)

6,ドラムとベース

こういったところです。

上の方が優先度が高く、下にいくにつれ補足する意味合いが強くなります。


で問題はここからです。

最初に言った通り、ジャンルは作者の意志により決定されます。

レゲエでいこう となったら、ギターもベースもレゲエを意識して演奏しますし

この曲はパンクの方が良いなとなったらそういう演奏をする訳です。

当然楽曲が用意される訳ですが、一番の問題点は次です。

楽曲はコードとメロディーによって成り立ちますので、

ギタープレイヤーもベースプレイヤーもコードに手を加える事は出来ません

その上でジャンルは決定済みとなれば、

コードを弾くギタープレイヤーにはいわゆる自由が残されていません。

ジャンルを規定するのはコードのリズムなのですから、リズムは初めから決まっていますし

コード進行はいじる事が出来ません。

となれば残された自由は、音色くらいしかありません。

なのでライブに行ってみると分かりますが、

ギタリストの足元には音を色々と変える装置「エフェクター」が山の様に転がっています。

花形と言われてやってみたもののほとんど自由に弾けないじゃないか!!

これがギターを弾き始めてから3年後にやってくるスランプだと言われています。

そういった鬱憤を晴らすために、しょうがないのでギターソロを弾かせてそのストレスを発散して頂こう

そういう風にして昨今のギターソロというものは定着していきました。

勿論、ギターにおける創造力豊かなプレーというのもありますが、

ギターでごにょごにょと何かをやるとした場合、

ジャンル的にはロックしかほとんど残されていないと言って過言ではありません。

レッド・ツェッペリンはそういった意味で偉大なバンドなのであります。

しかしツェッペリンを聴けば分かりますが、

ボーカルがいまいちおまけ的な感じがします。

ギターを活かす為に犠牲になっている訳ですね。

これは海外のロックバンドでボーカルだけメンバーチェンジされるという事と密接な関係があります。

ミスチルの桜井が脱退して違うボーカルが入りました

日本ではちょっと考えられない自体ですが、それはやはりジャンルの違いです。

ミスチルはボーカルを聴かせる為のバンドであって、ベースもギターもそれを引き立てる為にあります。



ここまでをまとめると、

ギターの自由度を上げるとボーカル・楽曲の自由度が下がる

楽曲とジャンルが決定している場合ギターに自由は無い

こうなります。


ではベースという楽器はどうかというと

コードは当然変えられませんが、

コードの中でなら基本的に何をしても良い

そう言えます。

これはつまり、楽曲を良くする為の工夫の余地が残されていると言い換えられます。

基本的な役割としては、ドラムとギターとの架け橋なんてな事が言われますが

求められるのは、安定した低音の供給とリズムを創りだす事それくらいです。

もっと言うなら楽曲をいじらずにコードを変えてしまう事すら出来ます。


例えば、

悲しい感じを出したいといってギターがAm7というコードを弾いたとしても

ベースがCの音を弾くと

あら不思議 コードは C6 という名前に変わってしまい明るい雰囲気になったりします。


例えば、

ギターがF-Gとコードを弾いたとしても

ベースがF-Fと弾く事で何だか落ち着かない気分にさせたりとかもできます。


専門的な話になりましたが、簡単に言うと

ベースは全体の響きにも影響を与える事ができる上に

どの音を出すのか?どこで音を抜くのか?

これらの判断が常に求められる非常にスリリングな楽器なのであります。

楽曲はコードとメロディーにより規定されますが、

ベースという楽器はさらにそこに別のメロディーを書き加える仕事と言っても過言ではなく

現に私が録音する際、一番長く時間がかかるのもベースという楽器なのです。

では第二回ベース講座の最後にうろ覚えですが、ビートルズのあるエピソードを紹介します。

「ポールが良いベースの演奏をする時はいつも決まって他人の曲だ」

これはつまり、自分の曲の時は曲をいかす為にベースは控え目に弾くのに

人の曲の時には歌を喰う位印象的なベースを弾く

これはベーシストの心情を見事に表現している話だと思います。