我が愛犬シロとリップクリームと猫属を巡る壮大なストーリー

私めの実家では代々太郎と名前を付けた犬があって、

初代太郎は、私が生まれる前に死んだ模様で、

概ね私と同じ位の時に生まれた二代目太郎と私は時を過ごしたのであった。

ドッグイヤーと言われるくらいだもんで、

大体同い年であろう癖に太郎はぐんぐんに成長してしまって、

我々兄弟は、犬を散歩に連れて行くと言っては

太郎に滅茶苦茶に振り回された挙句、太郎は見境なく他の犬に喧嘩を売り

その癖返り討ちにあって血塗れになり、私達兄弟は

その無残な太郎を見てもの凄く悲しくなったという記憶がある。

その後、小学4年くらいの時に

私のお里が知れるがチビと名づけた犬もまたやってきて、

チビはチビだけあって、私の方が体格も大きく先輩面出来たので大変可愛らしく

しかし、チビを太郎の所へ連れて行くと

嫉妬なのだろうか、元来の気性なのか分からんが太郎はガンガンに怒り

丁度その頃、うちの今は亡きじじいが

飼い犬に手を噛まれた事件があって、私は太郎が怖かったので

チビをよしよしチビやと溺愛したものである。

それからあまり構わなくなった太郎は、いつだったか

鎖から逃れてどこかで死んだのだけども、

そうしてまたしても実家に犬がやってきた。

今度は、シロという名前で

またもやお里が知れる命名であるが

今回は初のレディーという事もあって、これが非常に可愛く

生まれて間もないシロを風呂に入れて困らせたり、

少し大きくなったシロを無理やり風呂に入れて困らせたり、

車に乗せてわざと急ブレーキを踏んで怖がらせ、

座席の下からプルプルと震えて出てこなくなるくらい困らせたり、

テレビで猫が高い所から落ちても必ず足から着地するのを見て、

シロを背中から地面に落としてみたところ、

シロは背中からぎゃふんと言って落ちて私が物凄く困ったりと

仲良く、それは仲良く暮らしていたのである。

番犬として我が家にいたシロであったが、

誰彼見境無く腹を見せるという愛い奴であり、まずめったな事では吠えない犬であるのに

私が女子を家に連れて来た時だけは夜中であっても吠えまくるのであって、

今考えると、あれは家の番犬では無く私の番犬だったのかとも思うが

しかし、もうシロも死んでしまった。

うちの弟もシロの事は大変に可愛がり、

猿に石を投げられているシロを守ったり、

散歩に行ってくると言って家を出た弟が、

一人とぼとぼ逃げられたと言って帰ってくるなどエピソードはたくさんあって、

私は今もたまにシロを思い出すと寂しくなる。


猫属というものがある。

まあ勝手に私が思っている属性であるが、

消しゴム、ボールペン、目薬、リップクリーム

私はほとんど彼らの最後を看取ったことがない。

いつの間にか彼らはどこかに消えていて、最後の姿を見る事無く

私はたくさんのさよならをしてきた。

私の家にいた犬達もそうである。

私はどの犬の最後も看取っていない。

気づいたらいつの間にか実家からいなくなっている。

だから私はこの冬、一番高いニベアの500円もするリップクリームを買った。

どうせ無くすんだろう 心の片隅にはあるが、

絶対に無くさない決意を込めて今年は高いものを選んだ。

色は勿論、シロである。