出世魚

私達俺たちは、日々大胆になっていく。

新妻が奥様になっていく過程で、思想的贅肉は削ぎ落とされ

しこうしてソリッドなおばはんになる。

例えば、セール。例えば不倫。

雑踏で耳にするのはこれ、おばはんのコーラス及びスキャットが主であり

日常がある一つの狂騒。けたたましい。


あんなに可愛かった広末がどうしてこうなった?

だとか、

あんなに爽やかに見えた川越スマイルが今では悪い黒い笑みにしか見えないだとか

カップヌードルの肉が変わったよだとか

モヤモヤさまぁ〜ずのアシスタントが変わったよだとか

Phoenixの新譜が出てたよだとか

水道橋博士が炎上してたよだとか

時間とは物質の変化でしか認識されないとは確かにその通りで、

しかし車は急に止まれない。

物事には理由があると宮部みゆきも言っている。


そんな事を考えている折、ふと原因に思い至った。


乾燥わかめ である。

私達主婦は、味噌汁に乾燥わかめを使用するが

コーヒーを淹れる際は、軽量スプーンで確実に分量を守る癖に

乾燥わかめを入れる時はどうだいとお聞きしたい。

目分量、当てずっぽう、適当にやってはいやしないか。

乾燥わかめのその体積の増え方といったらあのインド人もびっくりの比率で

ちょっと入れたつもりが異常に盛り上り熱狂したかと思えば、

多くなり過ぎない様にちょっとだけ入れたら、本当にちょっとだけだったりと

正に訳ワカメ。意味不明。

しかしだからと言って、適正な量そのものが明確に定められているでもなし、

じゃあ翻ってワカメの使用を控えるかというと、乾燥ワカメの使い勝手は異常。

そこで持ち前の予知能力を総動員して、

なけなしの勇気を振り絞って、最後は見る前に跳ぶ。

その一線を超える時、正しくその時、瞬間の「えいやっ」

これこそが自暴自棄であり、なるようになれという精神で

正に台所の特攻隊。

日々そういった万歳アタックを繰り返しているのだからして、

あんなにポニーテールが似合っていた新妻も、暫くしたら

ソバージュのおばはんになるのもやむ無し。

僕は、そういう風に思うのだなあ