一番乗りの不安
6月末、少し日差しの強い日。
蝉が鳴いていた。
ソロで。。
私の耳には一際大きく響き、そして悲しい音色に感じられた。
「おい!誰もいねーのかよ!?誰か返事してくれよ!!」
声はどんどん大きくなった。
「何で鳴いてるの俺だけなんだよ。。まじで誰もいねーのかよ!」
一番最初に空を見るんだ
そんな気持ちが強すぎて、早くに地下を脱出した蝉は
もう相手なぞ誰でも良くなっていくのだろう。
聞いてくれる相手のいない独り言。
ただそれだけが空間を埋めている。
一人空の隙間で呻いている。
私はただそれを聞いていた。
メスを探す為に鳴いているのに、
仲間が欲しくて泣いているように聞こえる事。
空はただいつもと変わらず繰り返しの青だった。
学校に一番乗りした時も、
やはり誰か他の人が来るまでは落ち着かなかったものだなあと昔を思い出して。