センスとは何か

ライブに出るバンドメンは、必ずSEの選択を迫られる。

SEとはバンドとバンドが出演する合間に流れる楽曲のことで、

私達はこんな音楽が好きですねん

もしくは単純に上がる曲を事前にかけて、お客様の気分を高揚させる装置として

そこで選ばれる音楽はある意味でそのバンドの本質が全て浮き彫りになるものであって

故にセンスが問われる。

センスとは何か


バンプオブティキンが好きな人に対して、私はバンプオブティキンが好きですねんと言うと

この人はセンスが良い人だ と思われる可能性が高いのだけども、

CD1万枚は余裕で聴いてます みたいなDJが相手の場合だと

あ、バンプですか 良いですよね ロック。

みたいな変な気を使われる可能性が高い。

センスとは何か。

センスとはチョイスである。

バンプとB’zとニールヤングでは誰が好きか という問いがあった場合、

バンプないしB’Zを選択した人はニールヤングを知らない可能性が8割ある。

ニールヤングは1枚目から最新作まで全部聴いてるけど、その中ならバンプの方が好きだな

という人はこの世に1人か2人、多くて3人しかいない。

そう考えるとセンスというものは

何を知っているか? その中で何を良いと感じるか?

という自己申告でしか無い事が分かる。

SEというものにセンスの全てが出ると言っても過言では無いという意味は上記の理由による。

センスを磨く なんてな事を人は高校2年生あたりで意識し、

この間までハリーポッターを観ていたのに、いきなり「市民ケーン」もしくは、

勝手にしやがれ」「七人の侍」「エルトポ」なんてな映画を観始めるのだけども

結局のところそれは単純に知っているものを増やすというだけの事であって

高校2年生が「7人の侍」を好きだ と言ったところでセンスが良いという事に直結する訳ではなくて

そんな生意気な事を言う高校生は、

「赤ひげ」「生きる」「羅生門」「蜘蛛の巣城」を観てから出直しなさい

そしてウーバーワールドみたいな恰好でしゃしゃるのは大学生になってからにしなさい

と私に叱咤される運命であり、

センスというのはかくも難しいものだ と悟るのだけども、

そうして色々なものに興味を持ち、見聞を広めていくと

結局のところセンスというものは、

他人にどう思われたいか

という1点に収束していく羽目に陥るのだけども、

そこでいう他人というもの、それは不特定多数の人間では絶対に無く

多くの場合それは自分が愛する人であったり、親友ないし友人であって

自分が尊敬する人に自分は尊敬されたい と単純にそういう話であり

結果、

自分が何を尊敬するかがつまりセンスというものの本質なのである

という結論を私は得たのだけども、

ここまで自意識が突き抜けてくると、

SEを選ぶ際にも、

「もうアンダーワールドをかけるのは恥ずかしい」

ディスカバリーが売れてしまったからもうダフトパンクはかけられない」

ビートルズならアンソロジーのトゥモローネバーノウズだったらセーフ」

「逆にパフュームはありの可能性がある」

フランス・ギャルはそろそろ2周目だから大丈夫」

「インアサイレントウェイかけとけばオッケー」

みたいな事で、こうなってくると自分がどんな音楽を演奏前に聴きたいか

という視点は皆無で、どう思われるかを意識する事が全てである。

あなたに格好良いと思われたい

そのあなたを想像し頭の中に描くこと

それがセンスを磨くという事なのだ とおじさんになって思いました