菊地成孔 「憂鬱と官能を教えた学校 上巻」を読んで

不思議だね 音楽。

っつう事でバークリーメソッドというものを段階を踏んで進めてみると、

まるっきり私の作曲人生そのもので不思議なような当たり前のような。

私が作曲を始めるに当たって持っていた知識、武器は

ベースという楽器は、コードの中の音ならどれを弾いても良い 程度のもので、

ビートルズのソングブックを手に手に、ギターで和音を弾く 歌を歌うという行為に徐々に慣れつつ

人の曲を参考にコード進行をぱくり、それに自分で考えたメロディーを乗せるなんてな事で

ダイアトニックコードという認識すら無いまま、断片を継ぎ合せるなんてな事で

勿論そこにはキーという概念すら危うい状態で漂っている有り様ながら、

今思えば、一人レノン=マッカートニー式の作曲をしていた様な分裂気味の作曲があった。

そこから、様々な本を読み漁り

ビートルズのソングブックから段々と自然にダイアトニックコードというものを肌に定着させ

セカンダリー・ドミナントドミナント・モーションというものの存在を知った暁には

「やっぱドミナント・モーションだよな」的な事を言い、

ひたすらそれだけを追求し、ある時 どうやらディミニッシュコードというものがあると知った時は

いかにそれを楽曲の中で使うかを考え、

あーしてこーして、ペット・サウンズを耳コピしてみたり

人の様々な楽曲を聴いて、気になるコード進行は必ず調べ上げ

そうして少しずつ少しずつ知識、見分を広げてきた。

そして下巻の最初の方で調性と和声の解説が終わる頃出てきた概念。

モード及び、アッパーストラクチャーという概念を見て

うわあ 今現在私がやっている事が正にそれやんけ

と。


私は私なりに、常に自分が出来ない事に挑戦してきてあって

結局行き着いたところは、バークリーメソッド的にも終盤だったというのが

「ここは地球だったんだー」的な驚きと

孫悟空がお釈迦さまの手の平の上で飛び回っていたかの様で

恐縮至極でありながら、これ学校で習ったら3年で終わるのか 

という悲しみもあり、

しかしながらそういった音楽学校の卒業者達の中から

ぐんぐんに凄い音楽家が量産される訳でも無い事から、

それとこれは別物よ と今日も今日とて毛が落ちていく。


音楽をやっている人であれば、きっと得るものがある本だと思います。

書いてある事の9割くらいは私が知っている事でしたけども

理論以外の部分、特に音響物理的な物の見方に関して

私の場合は全くもって抜け落ちていたので、大変面白かったです。


例えば、ドとミを同時に鳴らした場合

差音というものが起きドが強調されるのだけども

ドとソを同時に鳴らした場合は、ソが強調される とか。

つまり、パワーコードでリフを作ると何かルートじゃなくて5度の方に耳がいくなあ

とかそんな風に感覚で捉えていたものが、

音響物理的にそういう風になっていますねん と言われると、

ああ やっぱそうなんすか としか言えなくて、

バークリーメソッドはそういった音響物理的特性とパズル的側面から

色々と和声、和音、調性の仕組みを定義付けているってのが

案外眼から鱗な考え方でして、

私もまだまだ未熟。若輩。恐縮至極。