ノイズレスとハイファイを経て今後いきつく音像

レディオヘッド「OKコンピュータ」を聴いて良く分からない、なんていう人もあって

私にはそれが本当に理解出来ないのだけども、視聴環境だろうか と考えが及んだ。


生音の良いところは、簡単に固有の音色を出せるという事があって

逆に言うとデジタルミュージックの限界は機材の能力の限界に束縛されると言え、

理論的にはケミカル・ブラザーズと全く同じ機材を揃えたのなら、

ケミカル・ブラザーズと全く同じものを作り出す事が可能であり、

故にエレクトロニカと呼べる音楽は、創作では無く選択なのではないか

なんてな議論もあった。

それを逆手に取って、人の声紋は固有のものであるからし

新人アーティストは全て新しい音楽をクリエイトしているでやんす

なんてな方便で今現在日本はスタグフレーションに突入しつつある。

デフレとインフレの融合 なんてな事をメタル界で言うと、

デフ・レパードイン・フレイムスの融合か

結局 普通のメタルじゃねえか と反感を買うのだけども、


「OKコンピュータ」は、バンド形態でのハイファイサウンドを追求した極めて意識的な作品で

フィッシュマンズ「宇宙日本世田谷」とほとんど同時期に発売されているのが大変興味深い。


生音を録音する という行為に必ず付き纏うのが、ノイズ問題である。

マイクは無音状態でも音を拾うお茶目さんで、

必ずヒスノイズというものを常に拾ってくる。

そこで我々はノイズを消す作業をするのだけども、そうすると必ず原音に影響があって

結果、ノイズを消すか原音を忠実に記録するか なんてな二律背反の狭間で揺れ

スティーブ・アルビニ的な人は、そのノイズが良いんじゃないか なんてな事を言い

テクノ系ミュージシャンは、だから生音は嫌いなんだ と言ってライン録音する。

ちなみにラインで録音するというのは、そのままの意味でケーブルで接続して録音するという事で

基本的にほとんどノイズが発生しない。


ギターという楽器の歪んだ音というものは、

過大な出力があって音が割れた状態なので、ノイズも同時に多くなるのであり

ハイファイな音と歪んだギターの音は、両立する事が難しい。

そこで、録音しているがギターを鳴らしていない部分をデータごと抹消するというやり方が出来て

ガービッジ「G」のこの曲では全体の録音データを消す事で、一瞬本当の無音を作り出してあって

それが面白い効果を生み出している。

アナログ録音の場合、テープとの摩擦のノイズが必ず入ってしまうので

こういったノイズ処理はデジタル録音になってから生み出された。


例えばくるりワンダーフォーゲル

これの場合はギターの録音部分がデータごと消されている。

一度サンプラーに取り込んでいるので厳密には違うのだけども、意味は同様である。


音が良い と一口に言っても、

原音のセンスが良い場合もあれば、純粋にノイズが少ない録音状態のものを指す場合もあるのだけども

レコードの場合は針がビニールを擦るノイズを差し引いても原音が忠実に再現される良さがある訳で

最早こうなると訳が分からない。


そこでフェニックスである。

フェニックス「エンターテイメント」

バンドサウンドとハイファイの両立という問題において、彼らが出した結論は

声以外オールライン録音する というものだった。

聴いた印象なので違う可能性もあるけど。。

このアルバムにおける彼らは、

歪んだギターの変わりにエレクトリック・ピアノか何かを歪ませて使っている。

これによって意図しないノイズを極限までカットする事に成功している。

その実験精神は賞賛に値するものだと思う。

がしかし、その歪んだエレクトリック・ピアノ自体がノイズであり邪魔以外の何物でもないっつうのはいかがなものか。

ノイズとバンドの戦いはまだまだこれからだ

シャーマンキング的な唐突な終わり。