グルーブの言語化

グルーブっつうのがある。

何年か前に久方ぶりに手に取ったロッキンオンは、2000年代に入っていたにも関わらず

表紙がレッド・ツェッペリンで、グルーブこそがロックですねん みたいな特集を組んであった。

隅々まで目を通した結果、結局グルーブとは何なんだろうかと私は思ったものだったが

まあ、いわゆるノリの事をグルーブと思って差し支えないのであろう。

ノリの良い奴 ノリの悪い奴 人間にも色々あるが、

簡単に言うとノリの悪い奴は、乗ってこない奴の事であって

俺は一人ここに居る みたいな感じで、海とかキャンプには行かない。

ノリの良い音楽というのはそういう意味で、私達をここでは無い別の場所へ連れて行ってくれるし

ちょっと隙をみせたら俺を乗せてくる感じで良い。


マイルス・デイビスなんかがビートルズに関して言う時、

ハーモニーがすげえ みたいな事を言うのだけども、実際はグルーブの一つの潮流を作った人達としても見る事が出来る。


例えばレッド・ツェッペリンのドラム、ジョン・ボーナムハイハットを聴くと

普通に聴くと8ビートで何の工夫もなさ気なのだけども、

意識をサウンド全体に広げると、いつの間にか明らかに16ビートで刻んでいる感じになって

あれっ 16で刻んでたのかと思ってハイハットに意識を向けると、

うわっ やっぱ8ビートじゃねーか。びっくりさせんなよとなってしかし、

いや、よくよく聴くと16ビートだな。と結論を出しそうになるものの

8で叩いてるけども、リバーブとディレイの感じで16に聴こえるのか!

まあ どっちでもいいや ロックンロールとなりがちで

これがいわばグルーブの本質の様なものだと私は思うのだけども、


ビートルズが発明したのは、

ドラムを8で叩いてそこにタンバリンで16を足すやり方であって、

この方法だとドラム自体の技術は然程問われないというメリットがあり、

私もリズムマシーン相手にグルーブを構築するのが常なので、基本この方法を踏襲してあるのだけども

このビートルズのやり方をファンクで応用したのは、トーキング・ヘッズである。

どっかの有名な奴がどっかで言っていたが、

トーキング・ヘッズのベースはあんなにもシンプルで、ドラムもすごいシンプルなのに

何であんなにもグルーヴィーなのだろう とか何とか言ってあるのだけども、

シンプルなビートに細かいビートを重ねる事で生まれるグルーブというのは、

ビートルズ以降、定石となった。

その後、レッド・ツェッペリン型のグルーブはスティーリー・ダン以降減り

ほとんど淘汰されてもいいと言って良い状況になった。

打ち込み主体の音楽がポップ・ミュージックの主流になったからである。

ファットボーイ・スリムの様に2種類の音の違うドラムを同時に鳴らす事も、

オーネット・コールマン「フリージャズ」から考えると遠くに来た感じがあるが

8ビートの音楽であってもどこかで16分音符が鳴っているなんてな事は珍しく無くなり

ハイハット一つでグルーブを操る時代は終わったと言っても良かった。

がそこで出てきたのがダフト・パンクである。

1枚目のアルバムは非常に音数の少ないハウスであるが、

キックの音の短さも特徴的ではあるのだけども、時折見せるハイハットワークは

マシーンを使っていかに人間的なうねりを作り出すかに挑戦しているようで

非常に興味深かった。

それが2枚目のアルバムではコンプという音を潰すエフェクターを巧みに操って

新たなグルーブを獲得するのだけどもそれは前にも話したので割愛。

それから2000年代に入り、ジャズ。

ブラックミュージックのほとんどがデジタルミュージック化する中、

今のジャズは人力でしこしこグルーブを構築している。

このグルーブが旧来型のものである事が実に興味深い。

ジャズという枠組みも、

「ジャズミュージシャンがやる音楽」という程度の意味に成り果て、

最早やりたい放題である。

ジャズミュージシャンが本気でヒップホップやリズムアンドブルースをやっている

それが面白く無い訳が無い。


楽器のプロ、本物のミュージシャンが音楽を奏でる

ただそれだけの事が実に素晴らしい事だというのはスティーリー・ダンビーチボーイズが証明してある様に、

ここ最近やっとこ聴きたい音楽がちらほら見つかってきている。

人類滅亡