6月14日 深夜

1年、2年とライブをやってきて当時私たちが思ったのは

音楽は伝わらない っつう事で結果私達はぐれた。

耳の良いリスナーに聴いて貰いたく始めたものの、いかんせん耳の良いリスナーがライブハウスに来ない。

そらそうだ 呼んでないのだから。

なので私達はいつからか、その場にいる人達を楽しませる事に全力を注いできた。

音楽はそっちのけで。

その場でキーワードを3つ貰って、ジャンルも選んでもらって

その場で音楽を作る。ウィームッシュ

そのやり方が自分たち自身飽きずに続けられる道でもあった。

スタジオで必死に練習を重ね、それを再現するだけのライブに価値があるとも思えなかった。

そうなったのも、青森や仙台でライブをしていた時期

もの凄く盛り上がったな というライブは決まって私がniceなMCをした時で

ライブハウスに来るお客さんの多くは、目当てのバンド以外には何も期待していないのだなあと知った。

私はいつでもアウェーという状況の中、頭を回転させてきたのだけども

16日のライブは違うはずだった。

ライブをしたところで、2人か3人を呼ぶのが精一杯の私達で

誰も呼べなかった日も沢山あったが、今回は20人の人が来てくれる予定だと聞いて

私はやる気が出た。久しぶりにホームでやれる。そう思ったのである。

で、色々ドラムとベースの人と話をした結果

呼んだ人の全員が私の事は知らない という事、

面白いライブをするから来てくれ と言って無駄にハードルが上がっている事が発覚して思った。

無茶苦茶アウェーやんけ と。


14日に東京に着いて、夜中4時間スタジオに入った。

1年半ぶりに会うメンバーではあるが、長い事やってきたメンバーでもある。

音を出したら、

「そうそう。これだよこれ。やっぱバンドだよな!」

くらいの事は思うのだと思っていたのだけども、私達は愕然とした。

自分達の音のしょぼさに。

曲が良いのは間違い無いのだけども、自分達のコピーバンドという感じで

良くないだけならまだ良いが、私達の耳は誤魔化せなかった。

アイポッドに入りきらない程の音楽を聴いてきた私達の耳は、

最早自分たちの演奏では満足がいかないレベルに達してあった。

普段私が休憩しよう というと苦い顔をするドラムが、

20分か30分やったところですぐに、休憩しよう という有り様で、

私達は会議を繰り返したが、出た結論は

「人が足りない」という根本的な問題であった。

具体的には、二人足りないという結論に至った。

4時間のスタジオ練習は、混沌を極め

私達はどんどん追い詰められていった。

次の日の練習が憂鬱だった。

つづく