ルーパー
先日、ちっこいスミス好きのおっさんとカフェーに行きあーでもないこーでもないと
音楽にまつわるエトセトラを油っぽく話していたところ、ルーパー。
私の、音楽家は皆ルーパーである という話を初めて聞いたと言っていたので
なるほどなるほど、これはウィキペディアにはのっていない独自の感覚なのかもしれぬなと
そう思いキーをタッチして候。
ルーパー。ループする人。
映画やアニメの様な映像作品であれ、舞台の映像化であれ音楽であれ
繰り返し鑑賞される事を前提とした作品を作る際に、最も必要な感覚は
作品と切り離された客観性を保持する事である。
自分の曲を100回も1000回も再生していると、
次第に最初に聴いていた感覚は失われていって、段々と意識が音楽に溶け込んでしまう。
具体的に言うと、耳という人間の器官は意識と連動してあって
それとは別に、目と違ってピントが極一部にしか合わない仕様になってあって
全体をぼうと俯瞰して聴く なんてな事は不可能なのである。
全体を聴こうと意識したとしても、耳は必ずどこかにピントを合わせる訳で
無理に全体に耳を行き渡らせたとしても、それは無意識と同義の状態になってしまい
結句、聴いているようで聴いていない状態を作り出すに過ぎない。
ので、
私達は音楽を聴く際、大概の人はある部分にフォーカスして聴くのである。
例えば普段音楽をそれ程意識的に聴かない人は、ボーカルを自然と耳で追ってしまうものであるし
逆に私の様な音楽気狂いは、目まぐるしく細部にフォーカスし続けるのだけども
そういった聴き方も、繰り返し聴いていくと段々とピントの合い方がその音楽に合わせて変わっていくのであって
つまりは、その時その時一番おいしい部分に勝手に意識が向かい
行程が決定していく。
しかしながら、我々ルーパーはその過程を現在進行形でいじる事が出来る時間超越者なので
1〜5回聴いた時に辿る耳の動きを想定して、無理無くスムーズにコントロールしていく事も出来れば
1回目に聴いた時の衝撃に特化して行程を組む事も出来るし、
10回、20回と繰り返し聴いた時に勘の良い人だけに分かる様に細工を施す事も可能であるし
つまりは、意図的に聴き手の意識の向こうで鳴らす音もあれば
この部分では必ず耳はこの音を追う なんてな計算も可能で、
あなたが初めて聴いた時の事
あなたが2度目に聴いた時の事
そういった未来を想定して、いつかこの音の意味に気づいて欲しいと願いを込めて
時間を、0と1のデータにパッケージングしてあるのだからして
1回聴いただけで、詰まらない曲だ
なんてな事は極力言わない様に私もしているのだけども、
世の中にはイントロで挫折してしまう糞音楽も多々あって、
私は困ったなあと思っている。