ヴァンパイア・ウィークエンドから紐解くボトム、トップス問題に関する論文(動画あり)

ベックの新譜を貸してちょんまげ と言って渡されたのが、

ベックのCD2枚と、ヴァンパイア・ウィークエンドのCD2枚で

良いから聴いてみろと言われて、仕方無いので聴いたところ良くなかった。

良さが分からないという感じじゃなくて、はっきり確実に良くなかった。

しかし、どうやら音楽家の間からの評価も高いみたいな話で

私にはどうにもそれが信じられないのだけども、良くない理由をはっきりと言葉にしたいと思い候。


まず、ロック・ポップスの世界では様々なブレンドでもって新たな音楽を創作してきた歴史がある。

例えばジーザス・アンド・メリー・チェインの場合であれば、

ノイズミュージック+ウィスパーボイス+フィル・スペクターといった具合で

そのブレンドを後からシューゲイザーと呼んでひとまとめにしてあり、

呼称自体は、あいつらみんな靴見ながら演奏してやんのwww

こっち見んな( ゚д゚ )といって馬鹿にしたのが発端である。

なので、

様々な組み合わせを試みる事自体は、音楽家の試行錯誤の基本形であり

色々混ぜてみました という行為自体は然程問題では無いと思った。


アフリカンビートを取り入れた良質な音楽もかつてたくさんあって

フェラ・クティを始め、暗黒大陸じゃがたら、アレステッド・ディヴェロップメント、ジャミロクワイの1枚目等等、

多くのアーティストはそれをいかに自分のものにするか試行錯誤してきた。

個人的にそういったものの中で一番好きなのは、以下の曲である。

アフリカンなテイストを完全に独自のデジタルなファンクに落とし込んだ名曲だと思う。


で、ここで考えたいのは

アフリカンビートはどこまで行っても黒人音楽であり、

その為にジャズやヒップホップとの融和性は高いものの、

インディーギターポップ的な白人音楽との相性は極めて悪いという事である。

そういった根源的問題を解決したのが、モータウンサウンドであり、

上モノをドリーミーに、リズム隊はファンキーに といったものを目指す時、

多くのアーティストは、結局のところモータウンに着地してきた。

何故かと言えば、ドリーミーな感触はリズムが強くなればなる程それが失われるからであり、

ペット・サウンズであれ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインであれ

強くリズムを押し出さない事で、最大限まで浮遊感を高めているのである。

しかし、ペット・サウンズを深く聴きこめば理解出来る通り

単純にリズムを簡素化して置いてきぼりになっている訳では無く、

上モノを損なわない様に綿密に計算し、非常に特殊なアプローチをリズムの面からも取っていて、

そこには繊細なバランス取りの試行錯誤がある。

この楽曲ではドラムこそ鳴らないものの、単純なビートで安易に誤魔化さず

楽曲に奥行きを持たせるべくベースと打楽器が絡み合っている。


ペット・サウンズの様なドリーミーな感触を持ったままに、

いかにクラブで踊れるかを追求したアヴァランチーズは、

結局のところ現代風なモータウンやんか という事で、着地。


そんなんどうでもいいわwリズムとメロディーは戦いやで!と頑張ったのは、

エイフェックス・ツイン

http://www.youtube.com/watch?v=MdZs5PVcwBs


と先人達は、様々に試行錯誤してきたのである。


そこでヴァンパイア・ウィークエンドは、どうかというと

上モノは白人音楽的なものが鳴り、リズム隊はアフリカンビートを元にしたダブステップな塩梅で

それ自体は別にどうでも良いのだけども、どちらも擦り寄らない。

あくまで上モノは上モノ、リズムはリズムってな感じでそこにある。

元々録音されていたリズムトラックを一旦消して、

アフリカンビートをとりあえず入れてみました 的な安易さしか感じない。

試行錯誤の結果では無く、あくまで過程としか感じられない居心地の悪さを私は感じる。

このノリが私には、芸術系の大学生のノリに感じられて非常に不快で

更にそこから一歩踏み込んで、自分のものにするのが音楽ちゃうんけ と思ってしまう。

私の場合であれば、

ベース弾きとしてファンクをごりごりに演奏してきた面と、

作曲者としてギターポップ、ソフトロックを愛し追従してきた面を

禿げる程悩み、結果剥げて今の形を作りあげてきたのもあって、

ヴァンパイア・ウィークエンドが作り出した音に対して、

良い音楽とは微塵も思えず、何しろ曲が良くないなあ と感じ、

第一、良い曲が書けるのであれば良い曲を活かす方向で音楽を纏めるのは親心であり

そういう点からも、彼ら自身自分たちの楽曲に自信が無いからこそ

ああいったアレンジになるんじゃないかなあと思った。

あと、私にはヴァンパイア・ウィークエンドを聴く気分が無いというのもたぶん大きいのだろうなっつうのは、

ドリーミーなものを聴きたい時は、プリファブ・スプラウトとかを聴く訳だし

リズムを楽しみたい時は、マイルス・デイヴィスとかスティーリー・ダンを聴くのであって

いつ聴いたら良いんだろう?という感じで、

そういう訳で私はたぶんこの先、ヴァンパイア・ウィークエンドは聴かないと思いました。