音楽の終身雇用
音楽の幸福な時代は終わりを告げ、今現在余生を惰性で過ごすに過ぎないというのは
基本的には経済の問題と倫理の問題で
例えばエゲレスでは労働者階級の子供がのし上がるには、サッカーをやるか音楽をやるかしかないと言われていた様に
かつて音楽には夢があった。
一発当てたら食える というのは、宝くじを当てる様なものであり
正に夢の様な話。それに人生を捧げるというのは、人生そのものが夢の中。
頭の中がお花畑。パラダイス イン ザ ミソスープ。
しかし、その宝くじに当たりが入っていないとしたらどうだろう。
ファック ファック ファックである。
オーマイガーなのである。
で、私は思った。オーマイガーと。
私は音楽を始める際に、音楽の方と雇用契約を結んだのであるけども
聞いていた話と現場では全然話が違っている事が多く、
当初の労働条件とちゃうやんけと怒った。
かつて、一発当てたら一生飯が食えると言われていた音楽も
その１発の価値が青天井と言える様なレベルまで高騰してあって、
アデルクラスで１発当てた人間は、余裕で一生食えるのだけれども、
相対性理論クラス、神聖かまってちゃんクラスでは全然食えないやんけ という事で
これはたぶん、結局のところはパイの奪い合い。
ラジオや有線で音楽が流れたらその度印税という名のお小遣いが入るのだけども、
もう既に飽和状態にあって、２０年前のヒット曲であれば
それは本当にヒット曲なので、今後もラジオやなんかで流れる事はあるのだろうけども
今現在、真に国民に浸透したと言える楽曲はあまり無いので
１０年後、それを聴きたいと思う人もまたあまり無い可能性がある。
となると、印税という名のお小遣いはあまり貰えず
生涯現役で頑張るしかないのである。
例えば、今売れているとされる日本のロックの人たちは
うまい事中学生高校生を騙して惣菜や米飯を買っているのだけども、
１０年後はどうなるかというと、１０年したらば彼らも社会人。
本気で音楽が好きになった人は、もっと良い音楽を探すかもしれないし
周りに流されて音楽を聴いていた人達は、もう自分達の音楽を聴いていないかもしれない。
となると、新たに新一年生を騙す必要があるのだけども
その頃には、バンドの人達も３０代から４０代へ。
当然、２０代のバンドの人達がボンゴボンゴと沸いてきていて、
ええ歳をしたおっさんが、物凄い青い事を言っているみたいな事になって
肉体も満身創痍。ステージ上は湿布の匂いが充満しているという有り様。
結局のところ、覚醒剤使用容疑での逮捕になるのである。
悲しい。
という事は、１発当てても食えないというのがここに証明された訳で
そうなると音楽活動をするという事自体が、当たりの無い宝くじを買うという
謎の抽象的行為になってしまう訳でふと立ち止まって思う。
何をしているのだろう 私は。
音楽は食えない
これによって、音楽をやる人間が減ればそれが最終的には音楽の為になるっつうのは皮肉なのだけども
東京でライブを何度もして思ったのは、才能の無い人間が多すぎるという事である。
というより、音楽にかける情熱の薄い人間の多い事多い事。
ビートルズを聴いた事が無い という事の罪の重さを知らないで、
したり顔でギターを持つ事の恥ずかしさは、
黒澤明を知らずに映画監督になると言う様なものであり、
ピカソを知らずに画家になると言う様なものであり、
コルビジェを知らずに建築家になると言う様なものであり、
加藤鷹を知らずにAV男優になると言う様なものであり、
JRを知らずに車掌になると言う様なものであり、
手塚治虫を知らずに漫画家になると言う様なものであり、
ジェームズ・ボンドを知らずにスパイになると言う様なものであり、
アントニオ猪木に感謝せずタバスコを使う様なものであり、
要するにお盆に墓参りをしない人間である。
簡単に言うと、
ビートルズを聴かない事が問題なのではなく、
ビートルズを聴かないでいても平気でいられる探究心、好奇心の無さが問題であり
創作活動において最も原初的な動機である探究心、好奇心の無い人間に
良いものが作れる訳がなかろうもん と博多弁。
そういった人々がまず音楽から離れる事で、ライブハウスが潰れまくると
ライブハウスに出れる人間は限られてくる。
そうなると、ライブハウスは出演者を吟味する。
結果、真に音楽が好きな人音楽に情熱を燃やす人しかライブハウスに出演せず
いつライブハウスに行っても素晴らしい音楽を聴けるという状況になる。
すると、ライブハウスに出演出来ない人達が多数出てくるので
そういった需要をいち早く察知した人がライブハウスを作り
またしてもライブハウスが増えて、糞バンドが増えてと
堂々巡り。
経済の地獄。
