ニヒルな私が滑ったよ

私が世界で一番好きな質問への解答は、カート・コバーンが言った

「あなたにとってギターとは?」に対する

「死んだ木」 というもので、

この解答こそがネヴァーマインド以上のカートの傑作ではないかと思うくらいだ。

なので、実践的虚無主義者の私は、いつかどこかで

「あなたにとって小説とは?」と聞かれたら

「インクで汚れた紙」 と答えたいと思っている。

また、私は根っこがベーシストなので、いつか誰かに

「あなたにとってベースとは?」と聞かれたら

「大きめの死んだ木」 と答えたいと思う。


そんなニヒルビデオ屋店員の私に、

「今かかっている曲は何ですか?」と問うた客があって

これはアデルという女子の21というアルバムの曲で候 と答えると、

借りよっかなー よそうかなー といった晴のち曇の様な顔色。

私が、良い音楽は他にもたくさんあるので好きにするがよろし と言うと、

では問うが、汝の良い音楽とは何ぞや とソモサンしてきて

あてくしは、あれやー これやー と客の好みを伺いながら

似合う曲、音楽を提供。

すると、こんなに音楽に詳しいのは何故だ! むかつく!となって、

あなたは何者だ、名を名乗れ とばかりに名札を覗かれ、

仕事中の私に向かって、

「普段あなたは何をしているのですか?」と聞いてきた。

あぁ

ここだ と私は思った。

私は顔面に持てる限りのニヒルを携えて、こう言った。

「普段は、ビデオ屋の店員をやっております」

「・・・」

д゚)チラッ

「・・・」

何だろう、この虚無的空間は。


真面目な人に向かって冗談を言ったら、いきなりキレられた的空気を感じた私は、

「・・・というのは冗談で」

なんてな最低、最悪の言葉でその場を繋ぎ、

背中の汗がやばいと思いながらも、それからはニヒルを捨て真面目な店員として

私はこれからも頑張っていきたいと思ったのでした。