バラードが好きという風潮

どんな音楽聴くの?という質問に、

バラードが好き

というのは大抵女子です。

頭の中の8割が恋愛、1割がマスカラ、あとの1割がダイエット

女子というものは、誰かに愛されたいと常々思っている人たちだと言えるでしょう。

音楽のジャンルでバラードというジャンルはありません。

これは結構意外に思う人もいるかもしれませんね。

バラードと聞くと多くの人が

涙のキッスや、ハナミズキ、カブトムシの様なスローバラードをイメージしがちですが

語源はフランス語で、物語的な起伏のある詩を元にしたものと言えるものです。

今では感傷的なスローテンポの恋唄を指してバラードと呼ぶ風潮がありますが、

今の日本の音楽のほとんどが愛だ恋だの唄がほとんどであります。

で、バラードが好きというのは常日頃から感傷的なものを好んでいるという事で

報われない恋に胸を焦がしている日々です

と言っているのに等しく、これではいけない。

カラオケ文化の台頭から、商業音楽のメインは中高生向けにターゲットを絞り

中高生と言えば盛りがついたお年ごろ、自然恋愛の唄がこれほどまでに氾濫したのだと思います。


私が歌詞を書く際に最も影響を受けた言葉は、松本隆氏が言っていた

「好きという言葉を使わずにいかに好きという思いを伝えるかが作詞家の腕の見せ所」

というもので、これは私の作詞というもののスタンスを決定づけるものになりました。


表現を深く深く掘り下げていくと、ストレートな言い回しは避けられていくのが常ですが、

どうしてこんなにも言い回しに私はこだわるのだろうと考えていくと、

要するに秘密の合言葉の様なものなのかもしれません。

分かる人にだけ分かる表現というのは、個人的な秘密をその人にだけ伝わる暗号でそっと教えるようなもので

多くの人に伝わらなければ意味が無い という大衆娯楽とその点で袂を分かつのかもしれません。

淀川長治先生は感性を鍛えれば人生が豊かになると仰っていましたが、

では感性とは何かというと、物の見方をたくさん知るという事ではないかなと最近は思います。

そしてそれにより、より多くのメッセージを受け取る事が出来れば

自然とその人にだけ伝わる表現方法も自ら選びとる事が出来るのではないかなと。

そう考えると、人間というのは無線に似ている気がしますね。

会話をしているようでも、その人に周波数を合わせなければ本当の意思の疎通は難しい事は多く、

話す相手によって言い方を変えるというのは、愛であり優しさであり

つまるところ、アホでも分かる歌詞というのはアホに向けて歌っているというだけの話であって

そこに上等だ下等だというのは存在しないのかも知れません。

そうであっても、私は歌詞には仕掛けを施したい側の人間でありますし、

そういうのが好きな人に届いたら良いなあと思います。

PS、新曲 「うさぎ」に仕掛けられたちょっとした謎が皆様に届いた事を願って。