第三回ベース講座 〜ベースという楽器を知ろう〜
音楽に興味が無い人がめっちゃ小さいギター持ってる人がいるわ(笑)という場合、それは大概ウクレレです。
あの人微妙に長いギターを持っているなという場合がベースです。
ベースには大きく分けて2種類ありまして、
一つがウッドベース、もう一つがエレクトリック・ベースです。
当然ウッドベースの方が歴史が古く元々はオーケストラなんかで使われていた楽器で
そこからジャズやブルーズ等のPOP音楽が世間で流行し演奏者も増えた時に、
ウッドベースでかすぎワロタ というベーシストの声を受け生まれたのがエレクトリック・ベースになります。
元々はただのウッドベースの代用だったものなので、いかにウッドベースに近い音が出せるか?が重要だった訳ですが
もともと音楽はクラブやバーで演奏されていましたが、
時代の流れで野外のフェスティバルが盛んになると大音量を出せるアンプが必要になっていきます。
ラジオやテレビのボリュームを目一杯出すと分かるように、
電子機器にはある一定の入力を超えると音が割れるという現象が起こります。
そこで、音が割れるくらいに大きな音が必要になった時
逆に音を割った方が格好良いんじゃね?
そうして生まれたのがロックだと思って間違いありません。
そこには機材の限界を逆手に取った発明がありました。
エルビス・プレスリーの時代にはまだギターの音は割れていませんが、
ビートルズの中期くらいの頃には割れた音のギターが一般的になり、
その汚い音を大人は嫌い、ロックは不良というイメージを後押しする事になります。
それでもベースという楽器で割れた音を出す人はまだあまりいませんでした。
きっと先入観として、エレキベースはウッドベースの代用品だというのもあったのだと思いますし
ベースもギターも音が割れているとグチャグチャして聞きづらいという理由もあったはずです。
しかし、それをうちやぶった人がいます。
それがクリームというバンドのジャック・ブルースという人で
こちらの演奏は3ピースというバンド編成のものでは最上の演奏と言われていますが
その理由の一つにベースという楽器が3ピースという編成で楽曲を破綻させずにギターと張り合うという事が大変難しいからというのが挙げられます。
楽曲を構成するのはメロディーとコードだと何度も書きましたが、
ギターソロというパートには決まったメロディーがありませんので、コード進行だけが楽曲を維持する拠り所となります。
そして普段コード進行を担当するギターが基本的には単音で演奏しますので、
コード進行を維持するのはベースの役割という事になります。
そこでのベーシストの仕事にはコード感を損なわない演奏が求められますが
そうするとベースの自由度はほとんど無いという事になります。
しかしこの楽曲はその部分を見事にクリア出来ています。
何故かというと、この楽曲はリフで出来ているからで
元々の楽曲は A C♯ E G という音を同時に鳴らす和音であるのに対して
ここでのアレンジでは、
A A G A A G E D とバラバラにして弾いていて、これが土台のメロディーとなっている訳ですが
これがアルペジオ(分散和音)と同じ機能を持つのですね。
リフというのは言い換えれば、変形したアルペジオと言って差し支えない訳です。
そして、変形したアルペジオで元々構成された楽曲である為に
ベーシストはリフを元にしつつ、色々な手を加え更に変形させても
出す音とタイミングさえ間違えなければコード感は維持できるという事になります。
これは一つの発明でした。
ベースは縁の下の力持ちと考えられていましたが、楽曲の出来を左右する潜在的な力が発見された訳です。
そしてクリームのクロスロードから時は流れ、ビートルズにもそれは受け継がれていきます。
これもベース演奏の中では名演とされていますが、
理由は簡単です。
このベースでなければ、この楽曲は全く別のものになってしまうからです。
この曲が仮に8ビートのルート弾きであった場合、この曲が凡庸な楽曲に成り下がってしまう事が簡単に想像されますが
ある楽曲を提示された時、ベース次第では名曲に成りうるという事が分かると思います。
ビートルズの中では他にSOMETHINGなんかがベースの名演と言われていますが
どちらもジョージ・ハリスンの曲であるという事は偶然ではありません。
何故ここまでポールはベースを弾きまくったかというと、
1,単純にやることが無くて暇だった
2,どうせジョージの曲だし、ベースで目立ってやろう
3,新しいベースパターンを創りだしてやろう
4,この曲をどう料理してやろうか
色々考えられますが、基本的に作曲というものは原初的な動機が失われるのを嫌う傾向にある為、
つまり楽しい曲を書こうと思った場合、創った人間は最後まで楽しいを貫こうとし
ベースの演奏も楽しいという気持ちを大事に演奏しますが、
人の曲にベースを付ける際は、初期の構想が無い為に
さあて どうしたものか?というところから始まって、最終的には作曲者の意図したものとは違う事になる場合があり
そういう諸々のすれ違いを指して我々は
バンドマジックとかケミストリーとか言う訳です。
一人の人間の想像を超え、色々な要素がミックスされる事こそがバンドの素晴らしさですが、
最終的には音楽性の違いで解散されるのもバンドです。
音楽を言葉で説明する難しさを感じますが、私は元気です。